今後、準優勝(準ずる成績)は単に次点ではなく優勝者と星一つ差と解釈したい

1983年5月場所後の横綱審議会終了時における当時の高橋義孝横審委員長の発言であります。

現在、「優勝に準ずる成績」と聞いて同点または星1差までという定義で捉えている人が多い理由はこの高橋委員長の解釈が浸透した結果であります。
では、実際にこの解釈を持って横審は運用なされたのか。


答えはNOです。


この高橋委員長の解釈発表から4か月後の1983年9月場所、13勝を上げた若嶋津に対して高橋委員長は「13勝2敗の成績は優勝に準ずる成績と考えたい」と発言

この時の若嶋津は確かに13勝を上げているものの、この場所で全勝優勝した隆の里・14勝次点の千代の富士に続く、2差三位の成績だったのです。
確かに13勝は立派な星と言えますが1差でもなければ次点でもない、そんな成績を高橋委員長は「準ずる成績」と考えているという朝令暮改の発言をただした記者団に対しては「九州場所に全勝優勝なら話が違います」と答弁。
かくして若嶋津は九州場所、全勝レベルの優勝なら昇進も議論になるという実質綱取り場所となったのでした。

翌場所の若嶋津は11勝止まりで昇進とはなりませんでしたが、これから4年後の1987年5月場所、12勝優勝―13勝次点(2差)の成績を上げた北勝海に対して高橋委員長のまとめる横綱審議委員会は横綱昇進に全会一致で賛成の決議を下します。
この時に横審のメンバーだった児島委員は「星の差だけで決めたら逆に甘くなる。星の差よりも品格と内容で決めるべきであり1差でも2差でもいい」というような話と共に北勝海の昇進の可否を決める審議の中身を語っており、実際に星の差よりも相撲内容を重視した審議だった事を明かしております。

実際には「1差までが準ずる成績」という高橋委員長の解釈はまともに運用されていなかったのです
それどころか、高橋委員長本人が当初より自身の解釈と違う行動を取り、実際に解釈と違う「準ずる成績」での昇進にまで賛成をしているのです。
なのにもかかわらず「優勝に準ずる成績」においては同点または星1差までという考え方の人が未だに多く存在します。

確かに今やその考え方がおおむね一般的となっており、この考え方は横綱昇進議論において一つの歯止めとなるのでしょう。
しかし、それよりも品格と内容を大事にするということがより重要であり、1差だけが準ずる成績だと杓子定規に決めるのは間違いであるという考えのもとで横審の運用がなされていたということも事実なのであります。


個人的には2差でも構いませんが、横審には2差を認める事によって拡大解釈的に甘い横綱を作る事のないように、それこそ品格と相撲内容をよく議論してほしいものです。
果たして今の横審にそこまで出来るかは分かりませんがね…