以前に私は、横綱昇進のボーダーラインとして
12勝準優勝13勝優勝」「12勝優勝13勝準優勝」「13勝準優勝12勝優勝」「13勝優勝12勝準優勝
くらいが準ずる成績でのギリギリの横綱昇進基準となってくるのではないかと説明しました。

そこで今回は、そのボーラ―ラインを超えたにも関わらず見送られた例を見ていきたいと思います。


見送られた例を見ていく前に一応、二場所で12勝以上の優勝と準優勝で横綱昇進を果たした例を紹介します。

初代若乃花    12勝次点(3差)―13勝優勝
佐田の山    13勝次点(1差)―13勝優勝
輪島        13勝次点(1差)―15勝優勝
北の湖        13勝優勝―13勝同点
千代の富士    13勝次点(1差)―14勝優勝
隆の里        13勝次点(1差)―14勝優勝
北勝海        12勝優勝―13勝次点(2差)
鶴竜        14勝同点―14勝優勝
稀勢の里    12勝次点(2差)―14勝優勝


以上の9例が昇進となっておりますが、詳細は前回ほか何度か説明してるものも多いので割愛させていただきます。


次に、二場所で12勝以上の優勝と準優勝で横綱昇進を見送られた例です。

柏戸        13勝優勝―12勝次点(1差)
玉の海        12勝次点(1差)―13勝優勝
北の富士    12勝次点(1差)―13勝優勝
大乃国        15勝優勝―12勝次点(2差)
貴乃花        14勝優勝―13勝同点
武蔵丸        12勝次点(2差)―15勝優勝
魁皇        13勝優勝―12勝次点(1差)
白鵬        14勝優勝―13勝次点(1差)


以上の8例が残念ながら横綱昇進を見送られております。

上の横綱昇進を果たした例と比べても遜色の無い成績を上げたものもありますが、運が悪かったようなものもあります。

一応、前提として「綱取り場所での12勝は優勝以外見送られる」という不文律がまことしやかに浸透しております。
これに対して唯一の例外は柏戸の12勝同点での横綱昇進ですが、この昇進自体が大鵬との同時昇進の為の異例の処置としてまさに「例外」とする向きがあります。
確かに、この柏戸の例を除くと優勝以外の12勝で昇進した事例はありません。
しかし実際には相撲協会や横審より「12勝の準優勝でも昇進の議論になる」とされた綱取りは存在します。
研究しただけでも3代目朝潮、玉の海、北の富士、清国、大乃国、貴乃花、魁皇、白鵬がそのように言われ、把瑠都なども口の軽く、いい加減な鶴田横審委員長によって一応はそのように言われた事もありました。

そうは言っても実際に12勝準優勝での横綱昇進が柏戸以外出て来ていないため、未だにこの不文律に固執する人が大勢ではありますが、私に言わせれば
昔より、状況に応じて出てくる「12勝の準優勝でも昇進の議論になる」という言葉が全てではないかと思っております。


ところで、これら見送られた8例の中で唯一、昇進の機運が皆無であった事例があります。
それは武蔵丸で、当時は連続優勝が原則の時代であり優勝して初めて綱取りの起点となるため、この12勝次点では綱取りのつの字も出ませんでした。
武蔵丸はこれ以降も大関で13勝同点の成績を2度出しておりますが、これらも綱取り起点と認められないなど綱取りに関してはかなりの不遇となっております。

その他、綱取り場所で優勝した玉の海北の富士の事例は共に諮問まで行ったものの横審より見送られ
逆に綱取り場所で準優勝だった残りの事例は審判部より見送りとなっております。

綱取りに成功した9例のうち7例は綱取り場所優勝のため、やはり尻上がりに調子の良い方が昇進の機運も盛り上がり横綱も誕生しやすいという事なのでしょう。


さらにこれらで注目すべきところは、昇進相当の成績を出したにも関わらず惜しくも見送られたために後の綱取りが甘めになったという所です。

柏戸玉の海はまさにここで昇進してもおかしくない成績だったという理由から後の「11勝―12勝同点」や「13勝優勝―10勝―13勝同点」での甘めの横綱昇進に繋がっていきますし
北の富士・大乃国・白鵬は翌場所、12勝準優勝でも議論になると昇進に甘めの設定がなされましたし
貴乃花に至っては実際に翌場所の12勝次点で数人の横審が昇進に賛成の姿勢を表しております。もっとも、貴乃花の場合はここで昇進出来なかった事により連続優勝の時代が始まってなかなか昇進できなくなってしましますが…


最後に、魁皇だけが昇進相当の成績を出して見送られた力士の中で唯一の大関止まりとなっております。

ところで、この間の日曜日にNHKで放送された大相撲特別場所を観ていると魁皇の五回目の優勝とその綱取りをやっておりましたが
綱取り場所、魁皇が朝青龍に勝てば横綱昇進の可能性もあったという事は一切スルーされてそんな事実など無かったかの様に朝青龍に勝って綱取りが翌場所に繋がったという表現で一貫しておりました。
2004年の九州場所千秋楽、朝青龍に勝った段階で魁皇にかなりの昇進のムードが高まっていた事は当時の放送を観ていた人では御存じの方もいるでしょうし、昇進しないだろうと冷めた目線で見ていた人でもあの勝った瞬間では五分五分ではないかと思わせる程の熱狂ぶりがあった事は覚えてる人もいるかと思います。
この間の放送ではその「これで横綱昇進なのではないかという熱狂」が、「綱取りが翌場所に繋がったための熱狂」へとすり替えられておりました。
これはまことにNHKの恣意的な編集だったと思います。